12 大円(おおまる)釈迦堂阿弥陀三尊

 

旧岩奥山竜泉寺堂跡と伝えられる、切畑大円釈迦本堂の一隅にある。

切畑・木代一帯は石英閃緑岩(黒御影石)など、石材の産地で、今も石きりのつちの音がこだまする。

 鎌倉後期、乾元二年(1303)の作で細長い自然石(石英閃緑岩)に阿弥陀三尊が舟形に彫られている。

中尊の阿弥陀如来は坐像で高さ29cm、阿弥陀の定印が見られる。

その下にある左右の(きょう)()観音菩薩勢至菩薩で、25cm、半肉彫りされている。

観音は蓮台を持ち、勢至は合掌する。

中尊の(にく)(まげ)高く荘重鎌倉後期特徴てい一段っぱがあ笠塔婆であったる。

 阿弥陀如来の下、両脇侍の間に「為三世四恩乾元二年(葵)()二月下旬願主□□敬白」とある。

願主の名は風化していて判読できないが、疫病・禍の悲運にあい、阿弥陀の慈悲にすがりたいと、願主の回向、冥福を祈って

造立したものであろう。

銘文中の三世とは過去・現在・未来または前世・現世・来世を指す。「四恩」とは父母・衆生・国王と三宝の恩を言う。

三宝とは仏(悟りを開いた人)・法(その教え)・僧(教えを奉ずる教団)をいう。